コロナ禍以降の2020年代において、住まい探しのトレンドには変化が訪れています。

本記事では、新定番となりそうな住まい探しの方法や近年話題となった言葉など、トレンドをまとめて紹介します。

住まいの探し方はオンラインへ

住まい探し・お部屋探しといえば、近郊の不動産屋に足を運び、そこで希望条件を伝えて物件を紹介してもらうのがかつての基本スタイルです。その後、不動産情報誌、不動産ポータルサイトなどが登場し、自宅にいながら希望物件を探せるようになりました。

現在では、スマートフォンのアプリでも希望条件で絞り込んで物件選びができます。ですが、希望物件を選んだらやはり不動産会社に足を運ぶのには変わりありませんでした。それが、通信環境やオンラインツールの進化により、自宅にいながら希望物件の内覧まで適うようになったのです。

ネットを介して内覧

コロナ禍で、非接触・非対面が求められた結果ですが、例えば地方から上京するにあたって、現地までいかなくても部屋が探せる・小さいお子さんを連れて歩き回る必要がないなど、新たなニーズを生み出しました。内覧先の部屋に不動産会社の担当者がおり、ビデオ通話を通じてやり取りをします。気になる箇所があればカメラを向けてくれるので、細かい部分まで確認できるでしょう。

不動産会社で、その会社が保有する物件のVR映像を閲覧する、といったサービスもあります。こちらも、歩き回る必要がなく、また立体的な映像が見れるので、ビデオ通話よりリアリティを感じられるでしょう。ですが、リアルタイムの映像ではないケースもあるので、気になる部分は担当者から口頭で聞く必要があります。

手続きのオンライン化で便利に

物件選びだけでなく、内覧の申込みや各種の手続きもオンラインで対応出来るようになってきています。例えば、入居申し込みや入居審査では、専用の入力フォームが用意され、パソコンやスマートフォンから手続きができる仕組みが浸透し始めています。

手書きだと、書き損じたときの修正や書き直しが手間ですが、オンラインならそういった手間もありません。書類を失くしてしまうといったミスも防げるので、入居希望者からするととても便利なしくみと言えます。ですが、一部の不動産会社は手書きを推奨しているのも事実。これは、書類の扱い方や字の丁寧さなどから、希望者の人となりを見たい、といった意図があるためです。

重要事項説明のオンライン対応が可能に

これまで、物件に関する重要事項説明は押印が必要なことから、対面で行うことが常でした。しかし、2022年5月の宅建法の改正によって、押印の義務がなくなったことで、オンラインで重要事項説明を行うIT重説が解禁となりました。対面時と同様に、書類を読み合わせながら行いますが、不動産会社等に出向く必要がないので、スケジュールの調整がしやすくなります。

また、書類の電子化も推し進められることが決まっているので、今後新たに住まい探しをする際は、オンラインの利便性をより享受できることでしょう。ビデオ通話ツールを使ってやり取りをするので、録画もできます(録画したい側が相手に許可を得る必要がある)。言った・言わないの事態も防げるようになるでしょう。

キャッシュレスの波は住まい探しにも

引っ越しにかかる費用は、現金手渡しや振り込み、クレジットカードなどで支払われています。キャッシュレス決済が浸透し、お財布や現金を持たない人も増えました。その影響か、各種費用をできるだけクレジットカード支払いにしたいという希望者が増えています。

引っ越し運送会社は、続々とキャッシュレス決済に対応。クレジットカードはもちろんですが、QRコード決済に対応している会社もあります。不動産仲介会社やガス・電気・水道といったインフラも、同様に引き落としや振込から、キャッシュレス対応にシフトしつつある状況です。

キャッシュレス決済の魅力は、利用金額に応じたポイントサービスや特典です。引っ越しは高額になるので、戻ってくるポイントも高くなります。普段からキャッシュレスで買い物をしている方であれば、利用したいと思うのも当然でしょう。

特にQRコード決済やおサイフケータイサービスは、非接触で支払えることから、コロナ禍において広がりを見せました。そのため、住まい探しでもキャッシュレスで支払いたいというニーズが高まったと考えられます。

テレワークの普及はどう影響した?

自宅やコワーキングスペースなど、会社以外の場所で働く人が増えました。余暇と仕事を一緒にとるワーケーションや地方と都市の2拠点で暮らすデュアルライフなど、暮らし方も多様化を見せています。

地方移住は自治体のサポートが受けられることも

地方では、リモートワークやワーケーションを通して若年層やファミリー層を誘致する動きがあります。引越し費用を助成したり、物件を紹介したりなど、自治体ごとに取り組んでいるので、都心を離れて地方暮らしをしてみたい!という方は、自治体のサポートがないか調べて見るのがおすすめです。また、地方の会社への就職を条件に、物件や引越し費用だけでなく、お祝い金などを用意していることもあるので、IターンやUターンを考えている方は情報を集めてから引っ越すとお得になるかもしれません。

自宅での仕事を想定した間取りが人気に

住まい探しでは、リモートワークを想定した部屋探しをする人が増えました。リモートワークは、自宅で仕事をするという状況から、プライベートとの境目が曖昧になる・家族がいて集中できないといった課題がありました。

そのため、自宅にワークスペースを設けた間取りの物件が登場。部屋の出入りによって仕事と私生活のスイッチを切り替えられ、家族に気を遣う必要がないということで、人気です。勤め先がリモートワーク対応を終了したとしても、個人スペースとして活用できます。時に、「一人になりたい」と思うことは誰にでもありますが、そうしたニーズにも合致している間取りと言えます。

インターネット回線の速度が重要視されている

仕事内容によっては、引越し先のインターネット回線の有無やスピードなどが気になる方も増えたと考えられます。近年は、インターネット利用が可能な物件は多いのですが、マンションやアパートとなると住人が同じ時間帯に一斉に接続すると速度が落ちるため、無料で使える回線ではなく、有料の高速回線を個人で引く、という方もいます。

ですが、物件によって新たにインターネット回線をつなぐことが難しい場合もあるので、高速インターネットが必要な方は、契約前に確認しておくのがよいでしょう。

住まいの購入のトレンドもチェック

住宅の購入の流れでは、住宅に使用する木材の高騰やZEHの認知拡大などが見られました。概要をまとめます。

ウッドショックとはどんな状況だったのか

木材価格の高騰は、ウッドショックとも呼ばれています。価格が高騰した理由はやはり新型コロナウイルスの感染拡大によるものでした。木材を切り出す人・運ぶ人・移動用のコンテナを運ぶ人…と、木材の輸出にかかわる人が行動制限によって働けず、市場に出回る木材の量が減ったことで価格が上昇したのです。その他にも、アメリカでの需要の高まりや虫害による伐採なども影響を与えました。

価格は、従来に比べて約2.8倍にまで高騰。木造住宅を建てていた方の中には、必要な量が確保できずに工期が伸びたり、そもそも家を建てるのを見送ったりといった事態になりました。ですが、2023年に向けて、価格は徐々に落ち着きを見せているのに加え、国産の木材を使用しやすいようにする働きも始まっています。

環境に配慮する人が増えZEHの認知が拡大

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、簡単にいえば省エネ住宅です。単なる省エネではなく、太陽光発電等の再生可能エネルギーを用いること・効率の良い設備や家の作りにすることによって、エネルギー消費をプラスマイナスゼロにするのを目指しているのが特徴です。

また、東京都においては2025年5月より、新築戸建に太陽光パネルを設置することが義務化されました。脱炭素社会に向けた取り組みとして、全国的なニュースにもなったので、記憶している方もいるでしょう。そうした潮流もあり、環境に配慮した住宅の形式であるZEH(ゼッチ)の認知度が拡大したと考えられます。

ZEHに似た様式として、スマートハウスや長期優良住宅などがあります。スマートハウスは、エネルギーを作る・貯める・使うといった3つの設備を備えた家を指します。ZEH同様に、使用エネルギーを自ら作り出すことで、省エネを目指します。

長期優良住宅は、長く快適に暮らせるように工夫された家です。例えば、機器頼りにせず構造を工夫して空調システムをつくる・採光しつつ断熱・遮熱の機能を取り入れる、といったかたち。結果として、暮らしやすいのに加え、省エネが叶います。

木造マンションや平屋に注目が集まっている

木造マンションはそのまま、木で造られたマンションのこと。建築技術の発達によって、木で数階建ての建物を建てられるようになりました。木材の課題であった耐火性や耐久性、耐震性などが大きく向上したことで実現。さらに、コンクリートの使用量を抑えられることから、CO2の排出量削減の面からも注目されています。また、建てる側にとっても、鉄骨等にくらべて木造は軽いので、工事費用が安くなるメリットがあります。

近年は、新築の際に平屋を建てる方が増えています。地震に対する備えやバリアフリーといった観点から、選ばれているといいます。平屋は高さがない分、安定しやすい構造です。上に部屋がある構造は、どうしても揺れの影響を受けやすくなりますが、平屋ではその心配が少なく済みます。また、1階部分しかないのでお年寄りや子どもが過ごしやすいのも平屋のメリット。自身が年配になったときのことを考えて平屋を選ぶ方もいます。

そして、リモートワークが浸透することにより、土地の安い地方へ移住する方も増えました。安くて広い土地を使い、間取りも広々と取れる平屋にすることがトレンドとなっています。階段がないので、2階のある家よりスペースを広くとれるのが魅力です。